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フランス不条理文学『異邦人』紹介

今日、ママンが死んだ

 

※ネタバレはあらすじ程度です。

あらすじ

主人公ムルソーは母が死んだ事を知りました。

 

ただ悲しみに暮れるとか、涙を流すという事はありません。

彼にとっては”今”しかないし、人はいつか死ぬものだから。

 

第1部では友人レエモンともめた異邦人、アラビアの青年を殺害してしまうムルソー

 

第2部では裁判を受けるが、ムルソーは周囲に理解されない。

まるでムルソーが異邦人になったかのよう。

 

殺害理由について訊かれ「太陽のせいだ」と答える男を通して描かれる、人間の苦しみと不条理の文学作品。

 

作者紹介

作者 アルベール・カミュ 他の作品に『ペスト』など

カミュ

 

1913年生まれ 出身はアルジェリア

『異邦人』は1942年刊行

1957年ノーベル文学賞を受賞

1960年に車が木に衝突し、死亡。

魅力紹介

長くない文量

難解そうだと感じるかもしれませんが、文の量としては157ページしかありません。

少し難しそうな本を読んでみたいと言う人に、ぜひオススメ。

 

ただ著者の述べたい事を解釈するのは大変な作業です。

 

それに文体もムルソーと言う、あまり一般的でない男の一人称で書かれているので、ややこしく感じる事もあると思います。

 

ただ超大作と言うほどの長さではないですし、高価な本でもありません。

 

読み応えのある文学作品への挑戦にオススメです。

 

”分からない”が面白い

初めて読んだ時、何を言っているのか分かりませんでした。

ミステリーや恋愛小説とは全く違う展開に、戸惑いました。

 

ただ分からないと思うと、理解しようと取り組むようになるのが人情です。

この本を通して読み取るという事をしよう、と思えるようになりました。

 

何を言っているのか? 何が言いたいのか? ムルソーはどんな人間なのか?

 

読みながら考える(解釈する)という作業は、エンタメ向けの作品ではできない事です。

 

貴重な読書体験だったし、読む度に”こうじゃないか”と考えるのが楽しくなります。

 

とにかく読者側にやる事が発生します。

アグレッシブに読みたいと言う人にお勧めです。

 

苦しみが分かる……かも

ここまで本の魅力として、内容を伝えて来なかったのは、解釈は人によって異なると思っているからです。

 

あまり余計な事を書いて、読者の解釈に影響を与えてはいけないと思うんです。

感想という事で書いているなら別ですが。

 

さて、僕は小見出しに書いたように人がなぜ苦しいのか。

あるいは、あの時の自分はなぜ苦しかったのか。

部分的に理解できた気がしています。

 

自分を他人に規定される事の苦しみ。

これは国を問わず、普遍性のある事なのでしょう。

 

もしかしたら……。もしかしたら人生に対して新しい捉え方ができるようになる……かもしれません。

 

まとめ

派手な展開やナゾ、大恋愛の話が読みたという方には向かないかもしれません。

 

でも考えたい、少し難しい小説にトライしてみたいと言う方にはお勧めです。

 

もしかすると他のつまらなそうに見えていた文学作品が、面白そうに見えてくるかもしれません。

 

世界的名著『異邦人』読んでみませんか?